「痛みが脳に焼き付く」ってどういうこと?
「昔ケガしたところが、ずっと痛む…」
「検査では異常なし。でも痛い…」
「良くなっているはずなのに、痛みが消えない…」
このような慢性的な痛みを抱えている方は少なくありません。
実は、こういった痛みの中には「脳が痛みを記憶してしまっている」ことが関係しているケースがあります。今回はその不思議なメカニズムについて、わかりやすくご紹介します。
痛みはどこで感じているの?
痛みというのは、ケガや炎症などが起きたときなどに、末梢神経を通じて脳に伝わります。
ケガなどの刺激
↓
神経が脊髄に信号を送る
↓
脊髄から脳に伝わる
↓
脳(主に大脳の感覚野)が「痛い」と認識する
このように、最終的に「痛い」と感じているのは、脳なのです。
脳が痛みを「記憶する」ことがある
痛みの信号が何度も脳に届くと、脳の中で痛みに関わる神経の通り道がだんだん強化されていきます。
これを神経学的には「中枢性感作」や「長期増強」と呼びます。
簡単に言えば、
「痛みの道が踏み固められて、通りやすくなってしまう」
ような状態です。
つまり、
- 本来ならもう治っているはずの場所が痛い
- 少しの刺激でも強く痛みを感じる
といったことが起こるのです。
「脳の中の痛み」による負のスパイラル
さらに、痛みの記憶は「感情」や「記憶」に関わる脳の領域(扁桃体や海馬)にも影響します。
- 「また痛くなるかもしれない」という不安
- 「この痛みは治らないんじゃないか」という恐怖
こういった気持ちが、脳をさらに過敏にし、結果的に痛みを長引かせてしまいます。
脳に焼き付いた痛みをやわらげるには?
脳が覚えてしまった痛みは、「気のせい」や「我慢」で治るものではありません。ですが、脳には“変わる力=可塑性があります。つまり、「学習」された痛みも、「再学習」で書き換えることができるのです。
鍼治療によるアプローチはかなり有効です
- トリガーポイント鍼治療で身体からの信号を整える
- 認知覚(痛みの再現)による痛みの神経回路の遮断
- 少しずつ改善することで「痛み=怖い」という認知をやわらげる
当院でも、単に「痛む場所」に鍼を打つだけでなく、身体と脳をつなぐ視点でのアプローチを心がけています。
痛みは、決して「気のせい」ではありません。
でも、その正体が「脳に記憶されたもの」かもしれないという視点を持つことで、
これまでとは違う治療の道が開けることもあります。
「どこに行ってもよくならなかった」という方も、あきらめずにご相談ください。
一緒に、「脳に焼き付いた痛み」を少しずつほどいていきましょう。
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