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2025/04/11

なぜ「なんでもない動き」で肉離れが起きるのか?

〜内部的な過負荷と神経筋制御の乱れ〜

今回は「肉離れ」について、少し深く掘り下げてみたいと思います。

「全力で走っていたわけでもないのに、ふくらはぎがブチッといった」

「後ろを振り返っただけでアキレス腱が切れた」

そんなケースは多くはないですが存在します?

ギックリ腰もこれに近いかもしれません。

確かに、スポーツ中のダッシュやジャンプなど、強い動作によって肉離れが起きるのは分かりやすいです。ですが、「なんでもない動き」で重大な損傷が起きるケースも珍しくありません。

たとえば、元イングランド代表のサッカー選手・デビッド・ベッカムは、後ろ向きに動いた拍子にアキレス腱を断裂しました。

これは、いわゆる「内部的な過負荷」が関係しています。

内部的な過負荷とは?

「外から見えるほどの強い動作ではないのに、筋肉や腱の内部には限界を超える負荷がかかっていた状態」

これが内部的な過負荷です。

たとえば、車のエンジンは静かに動いていても、内部では高温・高圧の状態が続いています。見た目には静かでも、エンジンに何か異常が起きれば大事故につながる――。

人間の体にも、それに似たことが起きています。

どうして内部的な過負荷が起きるのか?

1. 

筋肉の収縮と伸張の不協和

筋肉は「縮む(収縮)」だけでなく、「伸ばされながら力を出す(伸張性収縮)」という働きもしています。

たとえば、走っていて急に止まるとき、筋肉は伸ばされながらブレーキをかける必要があります。このとき、筋肉はとてもデリケートな調整を求められているのです。

ほんの少しでも、「縮もうとしているのに外から伸ばされる」というズレが起きると、筋繊維に無理なテンションがかかって肉離れを起こします。

2. 

拮抗筋の協調性が失われる

筋肉はペアで動きます。

前もも(大腿四頭筋)と裏もも(ハムストリングス)などがその代表です。

片方が縮めば、もう片方は自然に緩まなければいけません。

ですが、うまく緩められない状態があると、動作のたびに筋肉に強い負荷がかかってしまいます。

この「筋肉同士のチームワークの乱れ」も、見えない負荷を生みます。

3. 

神経のエラーによるタイミングのズレ

人間の動作はすべて「脳→神経→筋肉」の指令で行われています。

しかし、疲労・睡眠不足・ストレス・冷えなどの影響で、神経からの命令がズレて伝わることがあります。

わずかなタイミングのズレ。

でも、それが結果として「ブレーキとアクセルを同時に踏んでしまう」ような力のかかり方になり、筋肉の一部が壊れてしまうのです。

4. 

感覚のズレ

人間の体は、「今、足がどこにあるか」「どのくらい伸びているか」という感覚を常に脳に送り続けています。

ですが、過去の怪我や筋肉のアンバランスがあると、この感覚が狂います。

たとえば、「まだ足は真っすぐ伸びていない」と感じていても、実際は限界まで伸びていたとしたら…。

さらに力を入れた瞬間、その部位に壊れるほどの力が加わることになります。


鍼灸師の視点から

肉離れの治療で来院された方がこうおっしゃることがあります。

「ただ歩いてただけなのに、急にブチッときたんです…」

このようなケースには、外側ではなく「内側にたまった見えない過負荷」が必ずあります。

筋肉の張り、左右差、動きのクセ、姿勢の乱れ、神経の興奮状態――。

鍼灸治療では、こういった身体全体の協調性を整えていくことで、再発予防につなげていきます。

最後に

「強く動いたから壊れた」とは限りません。

体の中では、静かにでも確実に負荷が溜まり続けていることがあります。

それが限界を超えたとき、「なんでもない動作」で重大な怪我が起こるのです。

あなたの体がもし「ちょっとした動きで違和感が出る」「特定の動きが怖い」と感じているなら、それは内部的な過負荷のサインかもしれません。

小さな異変のうちに、ご相談ください。

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